5、6カ月頃

夫が育児や家事をしてくれなくて悩んでいます。

5カ月の男の子がいます。産後、どんなに私が大変でも夫はなかなか手伝ってくれませんでした。仕事も忙しいので仕方ないとは思うのですが、このままずっと一人で何もかもやると思うと気が重いです。

お話: 小児科医 佐山 圭子(さやま けいこ)

「気づいていない」だけのお父さんも多いのです。

産後すぐから毎日必死で過ごしてきて、ふと気づくと、自分ばかりががんばっている…そんなふうに思うお母さんの気持ち、よくわかります。最近は一部のお父さんが“イクメン”と言われたりもしていることもあり、以前よりも多くの方が悩まれているように思います。
じつは、妻がつらい思いをしていたり、夫への不満を重ねている場合でも、夫自身はそのことに気づいていないことが多いように思います。また、夫は自分ではがんばっているつもりなのだけど、妻の方はあまり助かったと感じていない、なんてこともあります。
そこをわかってもらえるように、どんなコミュニケーションをとるのがいいか、私なりのアドバイスをお伝えしますね。

できるだけ具体的に、伝えてみましょう。

お母さんは、赤ちゃんが生まれてからずっと必死に育児をしてきているので、目の前にやらなければならないことが山ほどあると思っています。一方のお父さんには、そのやるべきことが見えていないので、何をやっていいかわからないし、そもそも手伝ってほしいと気づいていない、ということが多いのです。
「こんなに忙しいのにわからないの?少しは察してほしい」という気持ちがあるかもしれませんが、そこは抑えて…ゆっくり深呼吸してみましょう。じょうずにお願いするポイントは、頼みたいことをできるだけ具体的にする、ということです。「今、おむつを替えてほしい」「私が掃除をする間、赤ちゃんを見ていてほしい」「おっぱいをあげている間にお皿を洗ってほしい」など、やってほしいことを明確にするだけで、お父さんも状況を理解して手伝いやすくなります。夫自身は充分「やっているつもり」という場合ももちろんありますね。その場合も「もっとこうしてほしい」と具体的なお願いの形で伝えるといいと思います。

「割りきる」のもひとつの手。

2人の子どものことなのに、改めてお願いをするなんておかしい、と思うかもしれませんが、「夫婦」や「子育て」のイメージがそもそも大きくずれていたことに、子どもが生まれてから気づく夫婦は多いのです。ちゃんとお願いをしたり、具体的な話し合いをすることで、そのすき間を埋めたり、お互いの考えのすり合わせをすることができると思います。
でも、子育ては母親の仕事、と思っているような人に対しては、そう簡単にはいきませんね。先輩お母さんたちのなかには、「そもそも子育てを夫に期待しないことにした」と割りきってしまっている人もいます。
自分がどちらが笑顔でいられるか、そこがポイントではないでしょうか。「2人で子育てをしたい。1人で全部引き受けるのはいやだ」そういう場合は、コミュニケーションをがんばってみたほうがよさそうです。自分も相手も余裕があるときに、感情的にならずに話し合えるといいですね。黙ったままストレスをためずに、歩み寄る努力を続けてみてください。疲れているとむずかしいときもありますが、お互いに感謝の言葉もかけ合えるといいですね。

子どもが生まれたら、夫婦関係は変わって当然。

子どもが生まれる前の2人だけの関係から、出産を経て、少なからず関係性は変わってくると思います。そこからさらに、お互いが心地よい関係にするのには、時間がかかることもあります。初めての育児であればなおのこと、お互い余裕がないし、産後のお母さんはナーバスになりがち。けんかも増えてしまうかもしれません。でも、あの産後があったから、あの真剣な話し合いがあったから、夫婦としてよりよい関係になったというカップルもいます。
夫婦の形は本当にそれぞれ。2人にしかわからないこともありますし、一概に「こうしたほうがいい」とは言えませんが、よい人間関係とは、お互いに尊重し合うものだと思います。どちらかだけが我慢ということのないように、2人が笑顔でいられる関係をめざしてみてください。

※記事の情報は2015年6月現在のものです。