0〜4カ月頃

ミルク育児ですが、母乳の方がよいのか悩みます

3カ月の男の子を育てています。出産直後は母乳が出たのですが、最近はあまり出ず、ミルクを足しています。「母乳の方が免疫がつく」という話も聞くので、なんだか申し訳ない気持ちになってしまいました。ミルク育児と母乳育児で、免疫に違いは出るのでしょうか。

お話: 助産師・保健師 田中 淑恵(たなか としえ)

母乳の免疫物質は、産後すぐの「初乳」に多く含まれています。

母乳育児は、経済的、ほ乳びんなどの消毒の手間や持ち歩くグッズが少なくて楽、などのメリットがありますが、母乳の分泌量には個人差があります。まずは3カ月まですこやかに赤ちゃんを育ててきた、ということが一番大事なことです。

よくいわれる免疫についてですが、お母さんから赤ちゃんへ送られる免疫には2種類あります。ひとつは、妊娠中に胎盤を通して赤ちゃんに届く「IgG」という免疫物質。これは出生後から減り続け、半年でなくなります。
もうひとつは、母乳に含まれる「IgA」という免疫物質。これは、初乳(産後5日目くらいの間に分泌する、とろっとして黄色味を帯びた乳汁)にたくさん含まれています。白血球などといっしょに、生まれたてのまっさらな赤ちゃんの腸管に届いて外敵からからだを守ります。この初乳がとても大事なので、産院では何度も吸わせていたのではないでしょうか。大切な免疫は、ちゃんと届いていると思いますよ。

母乳育児だから健康、ということはありませんよ。

初乳から10日くらいを経て成乳になると、「IgA」という免疫物質は少なくなっていきます。まったくなくなるわけではないので「母乳育児だから風邪をひかない」などの都市伝説が生まれるのでしょう。
母乳にはお母さんが持っている免疫しか含まれていません。ですから、母乳育児をしていても風邪をひくこともあれば、おなかを壊すこともある。ミルクで育てても風邪をひかないこともある。すべて個人差の範ちゅうです。

免疫は与えられるだけではなく、赤ちゃん自身で身につけるもの。

免疫は一方的にお母さんからもらうだけではなく、風邪をひいたり、ウイルスに感染したりしながら、それを治して赤ちゃん自身が身につけていくものです。ミルクと母乳の混合だから、ミルクオンリーだからといって、肩身の狭い思いをすることはありません。胸を張って、育児を楽しんでいただけたらと思います。

※記事の情報は2021年4月現在のものです。