和食にかかせない「だし」。それはおいしさだけでなく、健康のためにも重要な役割をもっていると伏木亨さんは語ります。幼い頃からだしを始める大切さについて、お聞きしました。

油と砂糖の誘惑に負けない、「だし」のチカラ

人は本能的にエネルギーとなる油と砂糖を好むようにできています。ただ、油と砂糖は依存性が強く、食べたいだけ食べてしまうと健康にはよくありません。
じつはこれらに対抗できるのが、「だし」の存在。エネルギー源のごはんとともに食べるとき、油や砂糖をとったときと同じ快感が生まれるため、カロリーを抑えつつ、満足感のある食事ができるのです。

だしへの嗜好は、離乳食期から幼児期がカギ

だしのおいしさを構成するのは、アミノ酸といったうまみ成分と香りです。この香りが「だし好き」へのカギになります。
油や砂糖と違って、「だし」は学習して好きになっていくものです。とくに離乳食期から幼児期、つまりおとなの食事になる前の準備期間が重要で、幼い頃に食べていると懐かしい香り、心地よい香りとして記憶されます。香りの記憶は鮮明で、味よりもずっと心に残ります。そうすると、中高生の頃にファーストフード好きになったとしても、おとなになって健康的な食事をしたいと思ったときに、自然に和食へ戻ることができるのです。

だしを伝えるというのは、子どもがおとなになったときに戻る場所を作ってあげること。好みの選択肢を増やしてあげることにつながります。

毎日素材からひかなくても大丈夫! 本物にふれる体験が大事

それでは、幼い頃にだしを毎日続けなければならないか、というとそうではありません。うちの子はみそ汁を飲まないから・・・と悩まなくても大丈夫。“本物のだし”のおいしさは一度体験すれば、それで充分、記憶に残ります。
“本物のだし”とは、昆布やかつお節といった素材からひいた風味豊かなだしのこと。お正月など年に数回でよいので、素材からていねいにだしをひいて、そのおいしさを伝えてあげてください。だしのおいしさは昆布の香りが決め手になるので、ふだんは顆粒だしを使って、それに少量の昆布をひとかけら足してあげるのもいいと思います。
味覚を育むということは、香りの記憶を育むこと、ともいえます。「だし」という、昔から日本人が積み重ねてきた食文化を、きちんと子どもに伝えて残していきたいですね。