赤ちゃんに伝えたい、素材のおいしさ。
管理栄養士 吉田 隆子(よしだ たかこ)
離乳食の基本的な考え方とコツを専門家がアドバイス。
「正しい味覚を育てる」それが離乳食。
育児に熱心なママほど、「さまざまな食材を使った、手の込んだ離乳食にしなくては」とプレッシャーを感じてしまいがち。けれども、そんなに「むずかしく考えなくていい」のです。
離乳食の最大の役割は「正しい味覚を育てる」こと。食材のもつ本来の味わいを伝えることこそ、離乳食を作るときにもっとも大切にしたいことなのです。
味付けはほとんど必要ありません。素材そのものの味をシンプルに伝えて。
「正しい味覚を育てる」のは、むずかしいことではありません。手の込んだ料理を作るよりも、まずは、ほうれん草ならほうれん草の、人参なら人参の「そのものの味」をストレートに赤ちゃんに伝えましょう。味付けはほとんど必要ないといっても言い過ぎではありません。
- その時期に赤ちゃんが食べることのできる食材を選ぶ
- 素材「そのものの味」を生かすことを心がける
- 成長に応じて徐々に素材の組み合わせを考えていく
これが離乳食の基本です。
おいしさを伝えるために、大切にしたいのは「素材選び」。
よい素材でなければ、「そのもののおいしさ」を伝えることはできません。よい素材というのは、新鮮なことはもちろん、おいしさや安全性への作り手のこだわりが感じられるもの。
たとえば、野菜なら農薬や化学肥料はできるだけ使わず、自然の恵みをたっぷり浴びて育った旬のもの、豆腐なら豆のおいしさが充分感じられるものなどです。素材がよいものなら、ただ「ゆでるだけ」「つぶすだけ」でも充分。おとなの食事を、味付け前に取り分けるだけでも立派な離乳食になります。
「食べなさい!」ではなく「いっしょに食べようね♪」という食卓に。
「おいしいね」「楽しいね」というおとなの表情や会話は、赤ちゃんにとって食欲増進剤になります。パパやママと同じ食卓を囲み、いろいろな食べ物の色や形、香りに触れ、みんなが食べる姿を見て、食べる音を聞く。おとなと同じものをたべられなくても、赤ちゃんは五感を使っておとなといっしょに食事を楽しみます。できるだけ赤ちゃんひとりだけの食卓にならないようにしましょう。
赤ちゃんが離乳食を食べてくれないとき、ママのほうが赤ちゃんに「食べなさい!」と強制する口調になっていませんか? 食事とは、本当はとても楽しい時間のはず。「食べなさい」ではなく「いっしょに食べようね」と、笑顔で楽しい雰囲気を作ってあげましょう。